釣りを科学する会社

株式会社smartLure公式ブログ--Making anglers' dreams come true--

バスのご馳走ってなんだろう?

 スマートルアーのシャチョー、岡村です。
 この夏は、札幌の豊平川ニジマスのトップゲーム(セミルアーを流すだけ)を満喫しました。楽しかったなぁ。
 でも、8月半ばから、全然反応しなくなってしまいました。夕マヅメに出てくるムシ(カゲロウ、ガ)が激減して、食べてるエサが変わっちゃったのかもしれません。

 さて、ターゲットのサカナがどうやってエサを選んでいるのか。釣りしてれば、すごく気になると思います。
 それで、参考になりそうな論文を探してみました。直訳すると「ブラックバス日和見的な摂餌」(Opportunistic Foraging by Largemouth Bass (Micropterus salmoides)。平たく言うと、バスって成り行き任せで食べてるよね、という題名ですが、ある程度のルールがあるみたいです。

 研究は、1980~81年、アメリカ・ミシガン州にある2つの小さな湖で行われました。湖は大学が管理していて、住んでいるサカナはほぼバスだけ。平均サイズは23~26センチ。1ヘクタールあたりの推定生息数は80年には330匹以上、冬を越せずに半数ほどが死んだ81年でも130匹以上の”小バス密集地”です。

 サカナは、エサの大きさ(乾燥重量)に対して、食べる手間(時間)が最も少なくて済むものを選ぶといわれています(cost curve of Werner=ワーナーのコストカーブ。機会があれば原論文を紹介します)。著者はこの考え方に基づいて、体重200グラムのバスの目線で、湖で得られるエサを13に分類しました。
 最も手間のかからないエサ(=ご馳走)はバスの稚魚やヤゴのほかミミズのような軟体生物。最悪なのはミジンコ、まぁまぁなのがボウフラ、カゲロウです。
 そうして、2年間、5~10月に25回にわたり計637匹のバスを捕まえて、胃洗浄で内容物を取り出して、一つひとつ分類。出現頻度、個数での割合、重さの割合を計算して重要度を100点満点の指数にしました。

 結果は…

・バスの生息数が半減した81年のほうが、稚魚(重要度は最大で29.8)やヤゴ(同23.7)、軟体動物(同22.4)のような、ご馳走を偏って食べていた。ミジンコの重要度は年平均で15.7で前年に比べほぼ半減した。
・81年のほうが、検出されたエサの数そのものは少なかった。
・高水温(平均の表層水温は22.8℃)の時期は、稚魚やヤゴなど、食べ物の幅が広がった。5月の低水温(同12.9℃)の時期はボウフラ(同42.0)を集中して食べていた。代謝活動で必要になるエネルギーや、どのエサが豊富なのかも関係しているようだった。

 

 

 著者は、「どちらかといえば、最も手間のかからないエサを選んで食べているようだが、そう言い切るにはもっと研究が必要だ」と分析しています。

 釣り人目線で考えれば、サカナは”ご馳走”があるなら、そっちばっかり食べるぽい。ご馳走をたっぷり食べてれば、食べる回数は減るらしい、って言えると思います。それから、低水温の時期には、ご馳走よりも小さいエサのほうがよさそうですよね。

 ルアーを選ぶとき、「今、ランカーにとってのご馳走は何か」を考えるのと、「豊富にありそうなエサは何か」を考えるのとで、釣果はかなり違うのかもしれません。

 なお、この論文(英語)は、原文が無料で読めます。採取のタイミングごとにエサの重要度をまとめた表(Table4、5)なんかは、とても興味深いですよ。

★「こんなこと知りたい」「自分の釣り経験だと、こんなことがあったけど、科学者はどうみてるんだろ」とか、ありましたら、ぜひコメントくださいw

■Opportunistic Foraging by Largemouth Bass (Micropterus salmoides)

James R. Hodgson and James F. Kitchell
The American Midland Naturalist
Vol. 118, No. 2 (Oct., 1987), pp. 323-336
Published by: The University of Notre Dame
DOI: 10.2307/2425789
Stable URL: http://www.jstor.org/stable/2425789
Page Count: 14

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